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「路面電車マガジン」 第21号  P4 岐阜線区 全路線の廃止 検討

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美濃町線イメージ
 美濃町線(イメージ) 2002年10月 撮影


岐阜線区 全路線の廃止 検討

先日、名鉄が岐阜線区全路線の廃止を検討していることが新聞の報道によって明らかになりました。

これまでにも廃止が話題になる事がありましたが、具体的な廃止の時期が示されたのは今回が始めてではないでしょうか。
もし来年の春に廃止の届け出がなされれば、平成16年4月前倒しも可能)の廃止もあり得る事になります。

先進各国が人間優先・鉄道重視の政策をとっているなかで、万が一鉄道の廃止ということになれば、交通・環境・福祉等 あらゆる面でとりかえしのつかない事になってしまいます。
現実問題として早急に対応策を検討しなければなりません。

例えば現在日本の路面電車は交通部局または鉄道会社によって運営されていますが、その鉄道会社のほとんどは
路面電車を事業の主体としています。
そのために経営の自由度が高く、思いきった料金体系や優遇カードの発行などによる利用者増加策をとったり、 路面電車まつり等のイベント開催による地域との関係づくりを進めたりして地域の交通手段としての実績をあげています。

広島県の広島電鉄は、現在では最先端の低床式路面電車を導入して、鉄軌道合わせて1日平均約16万人の利用客がある 中国地方最大の私鉄ですが、昭和50年以前には路線を存続するかどうかという状況にありました。
そこで広島電鉄では全国から中古の路面電車を大量に購入して短い間隔で走らせ利用客増に努力を重ねた結果、今では 最新鋭の電車を何編成も購入出来るようになりました。
これは路線の存続を求めた市民や識者の長年にわたる運動と、行政や警察の協力が一体となって実を結んだ結果です。

その他の街でも市民が交通のありかたと街の未来について議論を深め、あらゆる人にやさしい街づくりを進めています。
議論の結果は自治体の交通政策に反映され、にぎやかで安全、そしてバリアフリーな街の形成に、路面電車は重要な役割を担っています。

私は40年間岐阜に住み、20年に渡り歩行者・自転車利用者・自動車利用者の3者の立場から交通事情を見続けてきました。
その間に岐阜市内線長良線などが廃止され、自動車の量は増加の一途をたどり、ドライバーに限らず歩行者、自転車運転者の マナーも悪化(私の主観による)、交通事故もいっこうに減らず、市街地は寂しくなり車の通過音ばかりになりました。

私の交通秩序に関する考察によれば、路面電車や鉄道の踏切があることによって物理的・精神的に自己中心的運転が遮断・ 抑制されるのです。
また岐阜のように比較的道路の道幅が狭く軌道敷内通行可となっている道路において、2本のレールがあり車にとっては若干 走りにくい軌道敷は、スピードの出し過ぎを押さえる役割を果たしている事は間違いありません。

路面電車の表定速度が上がらない理由として、よく右折車が問題にされますが、岐阜の場合はたとえ軌道敷内通行不可としても 交差点では右折車のみ通行可とせざるを得ないでしょう。
右折車の問題は信号制御によって解決すべきであり、軌道敷内通行不可策は、結局はドライバーの批判を招き路面電車廃止論を 後押しするだけです。

路面電車のスピードが上がらない本質的な理由は、運転台の後ろに立ってみれば見えてくると思います。
そして、その解決には道路幅の利用割合再分割による電停幅の確保が必要不可欠であると思います。
その他補完策として、特定電停に限り停留所を交差点の向こう側に移す、交差点間に電停を移して電停エリア(またはバスと 共用の停留エリア)とする、道交法21条、31条、44条等の厳格な運用などの方法も必要だと思います。

過去の社会実験では一般自動車のみに負担が掛かったために受け入れられなかったり、他にはない個人用の便利な乗り物=車 の利用を控えてもらおうとしたために理解を得られなかったことがありました。
やはり現在の世の中で車に制限を加えると反発を招くのは必至です。

とはいえ、改正鉄道事業法によって路線の廃止が届出制となっている現在、大幅な収支の改善は「今のままでは」望めそうも なく、3路線が廃止に至る可能性は限り無く大きいといえます。
そうなる前に鉄道の可能性について考えてみませんか。
例えば3〜5分毎に電車が来たり、料金が市内均一100円で実績をあげている都市もあるのです。







「路面電車マガジン」 第21号  P4   Vol. 3 - 1      2005年 1月13日
初版 2002年11月12日
URL  https://www.minoden.com/mgz/mgz21/mgz21-4.html